
妖魔滅伝・団右衛門!
第1章 夜討ちの退魔師団右衛門
六尺、七尺はありそうな赤い体躯。隆々としているが無駄のない腕や足の筋肉は、力強さを物語っている。その肉体美を見せつけるためなのか、着ているのは虎の腰巻きだけだった。金色の長い髪を掻き分け額の上に二本生えるのは、黒と赤の縞模様をした角。髪と同じ金色の瞳は切れ長で、同性でも思わず見惚れる妖しさを放っていた。
正体を現した鬼は、片手で軽々と嘉明を押さえつけながら、取り憑かれ疲弊したのか意識を失った八千代を隅に投げ捨てた。
「八千代!」
「安心しろ、命に別状はない。あれには儂も世話になった、殺すには忍びないからな」
八千代を案じ眉がつり上がった嘉明だが、それを聞くと小さな溜め息を漏らし無愛想な表情に戻る。が、細身の八千代から屈強な鬼に代わり、嘉明はますます身動きが取れなくなっていた。
「それよりお主は自分の心配をした方がいい。これからお主は儂の下僕として、精を吐き出してもらわねばならないのだからな」
鬼は嘉明の着物を破り捨て、その身を惜しみなく晒す。流石に嘉明も焦りが隠せず、眉をひそめ舌打ちした。
「私はお主ではない、嘉明だ。お前は名をなんと申す? 名乗らずに襲うとは、不躾ではないか」
