
妖魔滅伝・団右衛門!
第7章 さすらい団右衛門
「そろそろ八千代の謹慎を解いてやろうと思ってな。悠久、迎えに行ってやるといい」
「よ、よいのですか!?」
「ああ。八千代は元気にしているか? あの子の事だ、気落ちして飯も喉に通らなくなっているのではないかと心配だ。早く私に顔を見せてくれ」
嘉明はそれだけ言うと、すぐに立ち去ろうと背を向ける。
「あ……嘉明様!」
しかし悠久に呼び止められると、足を止め再び悠久に振り向いた。
「どうした?」
「あの……不躾な質問ですが、どうして嘉明様は八千代にそれ程目をかけて下さるのですか。八千代は武士とは違い、卑賎の身分です。いえ、八千代だけでなく、猫又まで可愛がっているとか。そのような者にまで目を配ってくださるのは、どうしてでしょう」
嘉明は悠久の問いに首を傾げると、悠久へ問い直す。
「ならば聞こう。なぜ身分や立場で、態度を変えねばならぬのだ?」
「え? それは……」
「どんな身分であろうと、己を弁え日々研鑽する者は尊敬に値する。身分に胡座を掻き、努力を怠る者を大事にする人間はいないだろう。例えば我が主君秀吉様は、生まれに甘んじる事なく己を磨き、今天下人になろうとしている。これを尊敬出来ぬ人はいるのか?」
