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妖魔滅伝・団右衛門!

第7章 さすらい団右衛門

 
 嘉明は朝が来れば日が昇るのは当たり前だと言わんばかりの、淡々とした表情で語る。悠久だけではない、周りの馬番達も、耳を傾け心を動かしていた。

「八千代やトラも同じ事よ。私のために力を惜しまない者を、軽んじる理由などあるまい。身分で変わるものがないとは言えないが、他人に対する敬意は、身分で変わってはならぬのだ」

「嘉明様……」

「さあ、八千代の元に行ってやれ。あの子は、人一倍寂しがり屋だからな」

 だが悠久は足を動かさず、嘉明の手を掴み輝いた目を向ける。

「あなたは……本当に美しい。その愛は、妖魔にも等しく降り注がれるのですね」

「妖魔と言えど、敵対しなければ人と同じだろう。トラは真っ直ぐ私を慕ってくれて、可愛いぞ」

「ならばわしも……愛してくださるでしょうか」

「いちいち大袈裟な言い方だな。お前は我が部下だ。腹の中で反旗を翻しているならともかく、そうでなければ嫌う道理などない」

 悠久は掴んだ手を引き嘉明を抱き締めると、慌てる嘉明と馬番を差し置いて天を仰ぎ、涙を流した。

「おお、神よ! 運命の出会いに感謝します!」
 

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