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妖魔滅伝・団右衛門!

第7章 さすらい団右衛門

 
 だが、悠久は背中を引っ張られ、すぐに嘉明から引き離される。間に入り、悠久を睨みつけたのは、若い馬番の少年――太助だった。

「殿が困惑されています。自重してください」

「おっと、これは失礼。日の本はこのように抱き合う事が当たり前でない国でしたね。わしは異国の風習に染まる父に育てられたものですから、つい」

「あなたの事情など興味ありません。殿がお喜びになるか、お困りになるか。それだけが問題です」

 言い訳を聞かず睨む太助に、嘉明は苦笑いする。

「太助、もうよい。少し驚いただけだ。すぐ私を庇ってくれたその忠義、感謝する」

「殿が良いのであれば、それで」

 太助はあっさり悠久への警戒を解くと、下がろうと一歩引いた。が、そこで足を止めると、嘉明に目を向けた。

「殿」

 人の感情に疎く、また自らも表情に乏しい太助の目には、光が浮かんでいる。嘉明は真剣に見つめ返すと、太助の言葉を待った。

「殿のために力を尽くす者を等しく重んじてくださるなら、馬も……同じでしょうか」

「馬は泥道でも共に駆けてくれる、人の相棒だ。馬も、太助も、私に欠かせない存在だ」
 

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