
妖魔滅伝・団右衛門!
第8章 八千代の想い
八千代は脇差しを握り、団右衛門の腹を突き刺す。鈍い痛みと血が噴き出すが、団右衛門はそれでも動けなかった。それよりも深い傷が、心に走っていたのだから。
『慈しむ光は、いつでも平等だから許せたのだ。そして城の者は皆、それを弁えて嘉明を愛していた。だが、お主は嘉明を作り替えてしまった。平等に見せる事などない、お主だけが許される、特に深く絶対的な愛情を生み出してしまった!』
八千代はさらに脇差しを振りかざし、滅茶苦茶に団右衛門を刺していく。その傷は行方不明となり死体で見つかった、嘉明の部下につけられた傷と同じように。
『八千代はお主を憎んだ。そして自ら鬼の道に帰ってきた。人を殺し、心臓を食らい、それでも力を得られぬと分かれば儂と手を結び、いつか寝首を掻こうと腹の中で企み、己の欲と血にまみれ!』
「やめろっ!!」
『――挙げ句は残った魂すら儂に奪われ、哀れな童よ』
団右衛門は膝から崩れ落ちると刀を落とし、頭を抱える。涙を浮かべた瞳に、光は宿っていなかった。
「もう……やめてくれ」
『八千代を哀れと思うなら、その首を差し出せ。お主の死が、八千代の望みなのだから』
