
妖魔滅伝・団右衛門!
第9章 最終決戦・団右衛門!
嘉明は、団右衛門を責める訳でも泣き喚くでもなく、静かに頷く。そして長い沈黙の後、ぽつりと呟いた。
「あの時泣いたのは、どちらだったのだろうな」
嘉明の言葉で、団右衛門の脳裏に浮かぶのは八代の最後。嘉明は膝の上に乗せた拳を強く握り、さらに続けた。
「八代に魂を取られたのならば、あの場には八千代もいたはず。あの時、私には八代が八千代に見えたのだ。泣いた姿が、あまりにもそっくりだったから」
「……どうだったんだろうな。けれど、あんたに拒まれて泣いたからこそ、あれだけ隙が出来たんだ。あの状況で勝つには、あの刀の霊力を極限まで引き上げて、一撃で仕留めるしかなかった。術も、オレの刀も役に立たなかったからな。あんたが時間を稼いでくれなきゃ、勝てなかった」
「ならば、礼を言うのは私ではなく、良心にだな」
嘉明は、誰の良心に礼を言うのかは口に出さなかった。正直、団右衛門にも真実は分からないのだ。
「八千代には、感謝しないとな」
しかし自然と口に出した時、団右衛門が呼んだ名前は八千代だった。
「とはいえ、八千代の罪を許す訳にもいくまい。八千代を許せば、亡くなった皆に申し訳が立たないからな」
