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妖魔滅伝・団右衛門!

第1章 夜討ちの退魔師団右衛門

 
 団右衛門はその姿を目に留めると、駆け出し両手を広げて武士達の道を遮る。そして真っ直ぐ殿を見つめると、一言発した。

「あんた、狙われてるぞ」

 現れるなり物騒な物言いをする団右衛門に、殿より早く周りの武士が警戒を強める。

「何者だ!」

「オレは、塙団右衛門直之。退魔師だ」

 退魔師、などと名乗るが、団右衛門の見た目は若い牢人だ。おかしな事を話して注目されようと企んでいるのではと、武士達は皆厳しい目を向ける。だが、ただ一人――殿本人だけは、違っていた。

「そうか、退魔師か。私は加藤左馬助嘉明である。して、私が狙われている、とは?」

「殿!」

 周りの武士達は関わるなと言わんばかりに声を上げるが、殿――嘉明が首を横に振ると、皆押し黙る。団右衛門はそれを見ると、再び口を開いた。

「鬼だ。あんたを食っちまいたいと思う鬼の念が、あんたに纏わりついている。ここ数日、おかしな事が起きたり妙な夢を見なかったか? それは鬼が迫っている予兆だ」

「こちらには、鬼に恨まれる心当たりなどないが」

「そりゃないさ。恨みじゃねぇ、鬼が勝手にあんたを見かけて気に入ったんだろう。あんた、美味そうな顔をしている」
 

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