
妖魔滅伝・団右衛門!
第1章 夜討ちの退魔師団右衛門
嘉明は僅かに目を丸くするが、すぐに気怠そうな表情に戻る。そして、馬から降りると団右衛門の前に立ち、手を差し伸べた。
「その話、城で詳しく聞かせてもらおう」
周りがさらにざわつくが、団右衛門にとって騒音は無意味だった。この場で一番力のある人間、嘉明が自分を必要とするならば、断る理由などなかった。
豊臣家は、現在もっとも天下に近い家である。その配下である嘉明の城には、団右衛門ではなかなか手に入らない酒が所蔵されているに違いない。そう睨んだ団右衛門は、城へ着くなり酒を要求した。
「殿様ってのは景気がいいな! 器の小さい下働きとは大違いだぜ」
通された部屋には、嘉明一人だけが座っていた。そして杯には、濁りのない貴重な酒。団右衛門は嘉明自らにもてなされ、小さな酒宴を楽しんでいた。
「この城で働く者は下男も家老も等しく欠かせぬ者。そのような言い方は好まないな」
「だってオレ様の実力を分からないんだから、仕方ねぇだろ? 見る目のねぇ奴に阻まれる程鬱陶しい事はねぇ。その点あんたは、合格点だ」
「……まこと酒とは面白い。人の本質を、ありありと語るものだ」
