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妖魔滅伝・団右衛門!

第3章 加藤と加藤と団右衛門

 
 嘉明も、団右衛門の下心は承知である。毎日朝晩交わると散々ごねた団右衛門を、ようやく説き伏せて引かせたのは嘉明自身なのだから。

「……善処するって言ったくせに!」

「確かに言ったが、承知したとは言っていない」

 嘉明は後ろまで垂れる程前を濡らしているにも関わらず、冷めた言葉を吐き捨てる。欲に耽るか、耐え抜くか。朝は、二人の意地の張り合いだった。

「嘉明、でもあんたの勃った息子はどうすんだ? そのままじゃ辛いだろ、オレが奉仕してやろうか」

「いらぬ。自分で収めるから、お前は戻れ」

 団右衛門に奉仕させれば、理由を付けていやらしい事をするのは目に見えている。団右衛門との行為は流れ上必要なものであり、決して色欲に溺れたものではない。嘉明の心を支えるその矜持は、まだ折れそうになかった。

(なんとか鬼を倒すまでに許されないと、事件が終わった後抱けなくなっちまう。なんとかしないとな)

 時間を掛ければ陥落させる自信はあるが、そのために鬼を放置する訳にもいかない。焦りを覚えながら、団右衛門は部屋を出た。

(まあでも、そういうお高いところがそそるんだけどさ……)
 

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