
妖魔滅伝・団右衛門!
第3章 加藤と加藤と団右衛門
「――っ!」
気を緩め、油断しながら溜め息を漏らした、その瞬間だった。退魔師の網に、突然暗い影がかかる。焦りは変質し、団右衛門の表情は深刻なものに変わった。
団右衛門はすぐに駆け出し、城の外へと向かう。太陽は昇っているのに、どこか空は淀んでいた。
嫌な予感がして城の武士を数人連れてきた団右衛門だが、それは悪い意味で的中してしまった。廃寺の前に打ち捨てられていたのは、武士の死体。白目を剥き血を吐いたそれが誰かは知らないが、人数からするとそれは、あの日行方不明になった兵だった。
連れてきた武士達は死体に駆け寄ると、悔しさに唇を噛み締め地面を殴りつける。全身に付いた切り傷、流れる血、それは戦でも見る光景だ。しかし、食いちぎられ穴の開いた胸。それは異様な現状だった。
「なんて事だ……くそっ、鬼め!」
武士達は鬼への憎しみを募らせるが、団右衛門はふと気付く。そして、武士達にさらなる悲惨な推測を告げた。
「いや、これは……鬼じゃないかもしれない」
「何だって!?」
団右衛門は死体の前にしゃがみこみ、傷を観察しながら呟く。
