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妖魔滅伝・団右衛門!

第3章 加藤と加藤と団右衛門

 
 鬼に捕らわれ、精を搾り取られるだけの奴隷となった人間がどうなるか。同じ退魔師であるなら、清正がその末路を知るのは当然である。

「鬼になんて……させねぇよ」

「そんな言葉、信用出来るか! 鬼に精を取られた、すなわちそれは、嘉明が鬼に犯された証だぞ!」

 鬼は人の精を求め、人を攫う。だが鬼の世界である異空間は、時の流れが人の世とは異なるのだ。ただ攫っても、人は瞬く間に老け、使い物にならなくなってしまう。

 その問題を解消するのが、鬼の精だった。鬼の精は、人の魂まで浸透し、体を鬼と同質のものに作り替える作用がある。一度や二度の精では、魂の防衛機能に阻まれ、それはままならない。しかし絶えず注ぎ込めば、その内精は魂を食い破る。まずは体の時を止め老化を防ぎ、じわじわと内部を人から鬼に変えていくのだ。

 変質していけば、人としての精は劣化して不味くなる。完全なる鬼となってしまえば、もはや精を吐き出す奴隷としての意味はなくなってしまう。だが多少の劣化を我慢すれば、光の速さで死んでしまう人のままよりは長く精を得る事が出来る。鬼にとって、攫った人を犯し鬼へ変えるのは、必須の行動であった。
 

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