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妖魔滅伝・団右衛門!

第3章 加藤と加藤と団右衛門

 
 考えた事などない、とは言えなかった。退魔師の役目は、あくまで世の平定。平和のためなら時には依頼人を見捨てる事も、致し方ない判断なのだ。

「どんな事情があろうと、鬼から嘉明を守りきれず、取り返しの付かない事態まで悪化させたのはお前だ。そんな退魔師に、この先は任せられない。俺が友人として、せめて苦しまず逝くよう始末をつける」

「っざけんな! 鬼を倒せばなんの問題もねぇだろうが!」

「倒せなかったらどうする。現に嘉明を狙う鬼は、この志智どころか四国、京まで感じ取る程の脅威を得たぞ」

「オレ様は最強の退魔師団右衛門様だ! 誰にだって負けねぇ――」

「そのような高慢に付き合わされ、嘉明が鬼の手に堕ちたらどうする! お前は、嘉明を鬼にしてもいいのかっ!!」

 震える清正の拳に、団右衛門は彼の誠実さを見る。鬼と共犯など、疑うだけでも失礼だった。清正は心から嘉明を心配し、救うために殺そうとしたのだ。人としての生を、まっとうさせるために。

「まだ子どものうちから、俺達は腕を磨き、夢を語り合い、同じ時を過ごしながら共に高め合ってきたんだ。その嘉明が、鬼に歪められる姿など……俺には耐えられない」
 

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