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A heart and wound

第6章 揺らぎ

「じゃあ、撮影は以上でーす!お疲れさまでした!」

《ありがとうございましたー!》

智和「ありがとうございました。」

楽屋に戻って、お互い無言のまま衣装から着替え、帰る支度をする。

大野さんをチラッと見ると、偶然顔を上げた大野さんと目が合った。

智「ニーノ。…そんな怖い顔しないでよ。…まー俺のせいなんだろうけど。」

和「…そんな怖い顔してる?」

智「でもちょっと警戒してるでしょ?」

和「してない、って言ったら嘘になるね。」

ふふ、と笑った。

和「…腹の探り合いは、俺らには無意味じゃない?」

そう言うと、確かに、と言って大野さんも笑った。

智「じゃあ…聞くけど、ニノが聞きたいのはなんのこと?…松潤にキスしちゃったの、怒ってる?」

和「まあ、あんまり気持ち良くはないよね。自分の恋人に手ぇ出されるのは。」

智「ふぅん…じゃあ、元恋人だったら?…あ、恋人じゃないか。」

眉がピクリと動いた。

和「…翔さんのこと?」

智「…翔ちゃんは気付いてないだろうけどね。」

和「どういうつもり?」

智「皮肉だよね。…同じ人を想う人同士が付き合うなんて。」

大野さんは、俺の質問に答えることなく、そう言って嘲笑った。

和「…俺は、翔さんのことをちゃんと諦めたいって思ってる。それで…潤とちゃんと向き合おうって…」

智「無理だよ。」

俺が言い切る前に大野さんがきっぱりと言い放った。

智「ニノは…罪悪感があるから、後ろめたいから、翔ちゃんのことを追いかけないだけだ。

…松潤と両想いだって、知ってて関係持ったんだから。

自分からは、追いかけられない。だけど、翔ちゃんに自分の想いを気付いて欲しいって思ってるんでしょ?

今だって、翔ちゃんの気を引くために松潤と付き合ってるんじゃないの?」

和「違う‼︎」

自分の声の大きさに、自分が1番驚いた。

落ち着かせるために、大きく深呼吸をして、それから、口を開いた。

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