A heart and wound
第6章 揺らぎ
和也Side
翔「…ん……にのぉ、おはよ。
いい匂いがする…」
翔さんよりも早く目覚めた俺は、キッチンを借りて朝ご飯を作っていた。
和「おはよ、翔さん。
もう出来たところだったから、座って待っててね?」
翔「あ、ありがと…」
和「ふふ、うん…」
出来上がった朝食を並べ、2人でいただきますをした。
…なんだかくすぐったくて、この一瞬だけと分かっていても、幸せだと思った。
和「あ、今日翔さん早いんだっけ?」
翔「…んー今日は、そんな早くもない…」
和「そかそか…
俺、ちょい早めだから、先行くね?」
翔「うん…」
少し元気のないその返事が気になった。
和「どした?
…まだ、しんどい?
今日も…来ようか⁇」
翔「ん、大丈夫…
雅紀、が。
すごい心配してくれてるから、今日は雅紀の家行って、話してくる…」
和「…大野さんのこと、話すの?」
翔「いや…それは、多分、話さない。」
和「そっか…あ、どう?
美味しい?」
…翔さんの表情が、泣くのを我慢しているように見えて、話を逸らした。
翔「ん、美味いよ。
やっぱ、にの、料理上手だね。
普段から、すればいいのに。」
和「えー?
やだよ、めんどくさいし。
こんな風に俺が作るの、翔さんくらいだよ。
翔さん、料理しないでしょ?」
…翔さんの顔が少し赤んだのを見て、言ったことを後悔した。
その反応もズルいと思うけど…
翔「に、にのには、にのが料理しなくてもちゃんと料理作ってくれる恋人、とか居そうだしね!」
…動揺しすぎだし。
和「残念。
いたらいいんだけどねぇ。」
まさか、潤のことはまだ言えないし。
翔「そ、そっか…」
なんだか、微妙な空気になり、しばらく続く沈黙。
お互いが黙々と食べ続けた。