A heart and wound
第6章 揺らぎ
和「…あ、そうだ。
なんか、服借りていい?」
翔「あ、服なら…前置いてってたやつ、あ、るよ?」
途中で何かに気付いた翔さんは、気まずそうな顔をしたまま味噌汁を啜った。
和「…ん、じゃあ、それ着て行こっかな。
…この際だし、置いて行ってる俺の荷物、持って帰るよ。」
翔「…え…?」
ぱっと顔を上げた翔さんは、すごく驚いた顔をしていた。
和「んーだって、ずっと置いてあっても困るでしょ?
雅紀だって…いい気はしないと思うし。」
翔「そ、そうだね…そうだよね…
だ、大体、もっと早く渡すべきだったよね?」
明らかに、少しおかしな様子の翔さんに、俺は気付かないフリをして、話を続けた。
和「それは、取りに来なかった俺が悪いからさ。
…ごちそうさま。
じゃあ俺、着替えてくるわ。
あ、なんか袋もらっていい?
私物持って帰るから。」
翔「あ…うん、あの、寝室に多分沢山置いてあると思うから、使って…」
和「ん。ありがと。」
俺は、食器を流しに持って行き、寝室に入った。
俺の服は、一箇所に纏めて畳んで置かれていた。
…その中から、服を選んで着替えると、その他の服や、俺の私物の本や、漫画、置いていったものを全て袋に詰めた。
こうして見てると、結構沢山あるんだな…
それだけの年月を、一緒に過ごしてきたんだな、と思い知らされて、柄にもなくちょっと泣きそうになった。
…それでも、俺は翔さんに選ばれなかったんだ。
目につく自分の私物を全て詰め終わり、俺は寝室を出た。