A heart and wound
第7章 疑櫂
食事の間中、雅紀はずっと喋ってて、今日は何々をしてたとか、こんな面白いことがあって、とか、俺を笑わせようとしてるんだろうなって。
楽しい話ばかりで、きっと本当は俺に聞きたいこと、いっぱいあるんだろうけど、何度もそれを飲み込んで…
…昨日何があったの?とは、1度も聞いてこなかった。
薄々、智くんと何かあったことは勘付いてるんだろうけど。
きっと、雅紀なりに気遣ってくれてるんだよね。
…ごめん、無理させてるよね。
翔「ごちそうさま。
美味しかったー!
どんどん料理上手になるね?」
雅「ふふ…
翔ちゃんの美味しかった、が聞けるように、日々努力してるの!」
そう言ってピースして、ニカッと笑った。
一瞬、言葉に詰まってしまった。
翔「そ、なの…?
俺の、ため⁇」
雅「当たり前でしょ?」
雅紀は、さらっと、そう言ってのけた。
それがあまりにも眩しくて、俺は話を逸らした。
翔「…じゃ、片付けよっか…」
そう言って、食べ終わり、空になった食器を重ね始めた。
雅「え、スルー⁇
なんだよー!俺ちょー恥ずかしいじゃん!」
翔「いつも恥ずかしいから。大丈夫。」
雅「そか。じゃあ大丈夫だね!
って、酷くない⁈」
笑ってるけど、さっき一瞬、すごく傷付いた顔を見せた。
…俺が、傷付けてる。
こんなにも、俺のことを大事に思ってくれてる人のこと。
雅「…どした?翔ちゃん?」
気付くと、目の前の雅紀が首を傾げて俺を見つめていた。
翔「…あ、ごめん、なんでもないよ?
俺、食器、洗ってくる。」
そう言って立ち上がり、まとめた食器に手をかけようとした、
その手を、雅紀が制して、
雅「いいよ、今日は。
俺やるから、翔ちゃんは座って待ってて?」