A heart and wound
第7章 疑櫂
翔「え?でも…」
雅「いーから、いーから!
ほら、仕事終わるのも遅かったし!」
何度か食い下がったけれど、雅紀が、それでも折れなかったから、俺は甘えることにした。
翔「…ごめん。ありがとう。」
雅「大丈夫だって!
ほら、待ってて?」
雅紀はそう言うと、その食器を持ってキッチンへと向かった。
俺は、その雅紀の背中を見送ると、また、ソファへと移動して、そこに座った。
…今日、ここに来たのは、距離を置こうと伝えるためだった。
俺が、ちゃんと周りのこと見てなかったせいで、智くんを傷付けた。
多分、ずっと傷付けてた。
だから、俺はちゃんと智くんと向き合おうって。
それで、雅紀のとこに堂々と戻って来よう。
そう、思ってたけど。
…それはもしかしたら、俺のエゴなのかも。
俺の、勝手な自己満な行動なのかもしれない。
そうだとしたら…俺の勝手な行動に、大切な2人を振り回して良いわけない。
…じゃあ、どうすればいい?
雅「…ょ…ん…翔ちゃん?」
その声で、俺は目を覚ました。
翔「…ぁ…ごめ…俺、寝てた?」
雅「うん。…起こすの迷ったんだけど、すっごい眉間にしわ寄せて寝てたから、気になっちゃって。」
そう言うと、俺の頭に手を乗せ、そっと撫でた。
雅「嫌な夢でも見た?」
翔「…あんま、覚えてないや…」
雅「…そっか。」
翔「…雅紀、あのね…」
雅「あ、翔ちゃん。
追い焚きしといたからさ、風呂入っといで?」
翔「あ…うん。ありがと。」
そうは言ったものの、今を逃すと、話せなくなりそうで…
動くのを躊躇っていた。
そんな俺に、
雅「行っといで?
…待ってるから。
話、あるんでしょ?」
そう言ってくれた。
翔「…ありがと…」
…ごめんね、雅紀。
心の中でそう呟くと、バスルームへと向かった。