A heart and wound
第7章 疑櫂
雅紀Side
…翔ちゃんの言いたいことはわかってた。
家に着いた時、顔を見た時から気付いてた。
翔ちゃんは優しいから、きっと智くんのこと考えてんだよね?
あらかた、智くんに告られたか、それっぽいこと言われたか、そんなとこでしょ?
…智くんの気持ちに気付けなかったって、それで傷付けてたんじゃないかって、気にしてるんでしょ?
それで、自分も傷付いてんでしょ?
…だから、俺と距離、置きたいんだよね?
わかってる。
翔ちゃんのこと、ずっとずっと見てきたんだから。
何考えてるかなんて…大体わかっちゃうよ?
だから、わざと先延ばしにしようと話を逸らした。
…だって、今、翔ちゃんと距離を置いちゃったら、もう戻ってこない気がして。
俺の元から離れていちゃうんじゃないかって。
そんな予感があったから。
だから、逃げて、逃げて。
でも、それじゃダメなんだよね…
しばらくすると、遠くの方で、扉の開く音がした。
…上がったかな。
ガチャ、と扉が開いて、翔ちゃんが入ってきた。
翔「…ま、さき…風呂、ありがと。」
いつもはそんなこと言わないで入っちゃうのに…
雅「…翔ちゃん、髪濡れてるじゃん、乾かして来なかったの?
…も〜、待ってて!
乾かしてあげるから。」
そう言って、ドライヤーを取りに行こうと立ち上がった。
翔「い、いいよ!
気にしないし…」
それを止めようとする、翔ちゃん。
雅「俺が気にするよ!
いーから!待ってて?ね?」
そう言うと、しぶしぶ、と言った感じで行かせてくれた。
それでも、髪を乾かし始めると、大人しく、気持ちよさそうにしていた。