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A heart and wound

第4章 嫉妬

智Side

お店に入って数時間が経ち、そろそろ閉店の時間が迫ってきていた。

智「しょーちゃーん、大丈夫⁇」

翔「へぇっ⁈何がぁ⁇」

翔ちゃんは顔を赤く染め、呂律も上手く回らなくなっていて、何が可笑しいのか、1人でケラケラと笑っている。

酔っても、あんまり変化のない翔ちゃんだけど、今日はわかりやすく酔っていた。

もうっ、俺のペースに追いついて飲もうとするから…

…それとも、何か酔いたい理由でもあったのかな?

智「そろそろ帰ろうか?」

翔「…えーもう帰るのぉ?」

智「もうタクシー呼んだからねー」

俺は翔ちゃんの言葉を無視し、帰る準備を始めた。

智「…とりあえず、会計してくるね?」

翔「あ、もう払ってあるよぉ?今日は俺が誘ったんだから、智くんは払わなくていーのぉ!」

そう言って、またケタケタと笑った。

いつのまに。

…さすが翔ちゃん。

酔っててもそういうとこはしっかりしてるんだなぁと感心した。

…って感心してる場合じゃない。

とりあえず、タクシーまで連れて行って、それからどうしよう。

このまま、酔ってる翔ちゃんを1人で帰すのは心配だし。

智「…翔ちゃん、1人で帰れる?」

翔「んん〜?らいじょーぶよ!」

…だめだ、翔ちゃんだいぶ酔ってる。

…仕方ない。

酔いが覚めるまででも、俺の家に連れて行こう。

智「…とりあえず、もうお店閉まっちゃうから、出るよ!」

翔「はぁーい♪」

なんだその可愛さは!

…酔っ払ってても可愛いとか反則だと思う。

智「…はぁ…まあいいや。歩ける?翔ちゃん。」

翔「よゆーう!」

そう言って、いきなり立ち上がると、たったかと、走って行ってしまった。

智「待ってってば!」

俺はいそいで翔ちゃんの荷物と俺の荷物を手に取ると、翔ちゃんを追いかけた。

俺、なんかめっちゃ振り回されてるなぁ。

もうまるで…天使の顔をした小悪魔。

でも、憎めない。

そうやって、まんまと罠にはまっていって、そこから抜け出せなくなるんだ。

タチが悪いのは、それが無自覚ってこと。

何人もの人間をそうやって虜にして、抜け出せなくするんだ。

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