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幻星記序章~白夜の時終わりぬ…だが黎明の時来ず

第5章 〈ネイア〉

回廊と廊下を抜けた先…ぽっかりと開けた地、五階まである吹き抜けのそこは…秀麗な造りと、緩やかな曲線の柱が印象的な場所である。右手には、玄関へと続く大扉。左手には二階へと続く大階段がある。二階へは、途中…枝分かれするかのごとく、左右に分かれている。〈刀〉や侍女達がせわしなく行き交っている。改めて…ゆっくり…見る三人。
「うわー!!。すげぇー!!。」リューンは、ぽかんー口を開けて驚く。
「すごいなー!。」エイナは、感嘆の声を上げる。
「すごいーすごいー!!。」ミリリアは、くるくる回りながら言う。カーンは、〈六の剣〉の後を黙々と行く。エイナとミリリアが、遅ればせながらついて行く。
「いくぞ!。」エイナに声を掛けられ、
「う…うん…。」慌てて最後尾につく。
二階に上がると大きな扉が目の前に広がった。
「〈謁見の間〉だ。」〈六の剣〉が、戸を二回叩き、中へと入って行く。
「失礼します。」カーン…エイナ…ミリリア…がそう言い、頭を垂れて…入って行く。
「えーと…失礼します。」ぎこちなく頭を下げると、小走りで…カーンたちのもとへ急ぐ。
部屋の最奥…一段高い場所に、〈ネイア〉はいた。色鮮やかな青色の髪に薄い紫の瞳が映える。
「待つ。ました。」魔族は、完成された美しい姿体の代わりに…感情を持たない。また…その姿体に触れたり、血を飲んだりする事は、死を意味する。
抑揚のない声、能面のような美しい顔…それなのによくあっている。
「レリー。」カーンに近づき、腕を絡ます。エイナが睨むように見る。
「怖い。」着物のような衣の裾を口元にあてる。
「〈ネイア〉様…。」カーンが、押し返すように…離す。
「つまらない。」ひらりー舞う。
「〈シセリウス陛下〉は、どちらにおられますか?。」
「ミランダとエイナ。いる。」
「案内しよう。」
「頼む…。」
「後。会いたい。」
「わかりました。行くぞ!。」
「うん…。」
「了解…。」
「はぁいー。」
頭を下げ、去る〈六の剣〉とカーン。ぎこちない動きで、慌てて…頭を下げるリューン。すんなり…頭を下げるエイナとミリリア。

〈六の剣〉を先頭に、カーン…リューン…エイナ…ミリリアが続く。
五時の鐘が鳴る。

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