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──しばらくして、走り疲れた私は、またゆっくり歩き出した。


アパートの階段をのぼり、ドアの鍵を開ける。



美咲「ただいま」

って、誰もいない部屋に言っても仕方ないか。


最初は、一人暮らしがとても不安だった。何が不安というわけでもないが。


私は机の上にカバンを起き、着替えを取ってお風呂へと向かった。





──お風呂から上がり、とりあえずベッドに腰掛けた。


あまり考えないようにしたが、どうしても、あの男が気になってしょうがなかった。


ベッドに寝そべり、目を瞑った。


『何故筆が無いのに手が汚れていたのだろうか』
『何で傘を持っていなかったんだろう』
『それに、あの人はどんな絵を描くんだろう』


考えていくうちに、段々と失礼な事をしたのかもしれないと思えてきた。


特に何をされたわけでもない。ただ、嫌な予感がしただけなのに。そして、挨拶もろくに返さずに走って逃げてしまうなんて。


この辺に住んでいるのなら、また会うかもしれない。


私は、次に会うことがあれば、絶対に謝ろうと決意した。