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ドラクエらんど

第19章 ビッツの館 (後編)

「ビッツの正体…?」

「とりあえず弱味握られてるんなら、余計助けたらなあかんやろ」



そう言うと昭玄さんは腰を上げて、れんじと共に鉄格子をガシャガシャ動かした。
しかし鉄格子はびくともしない。
その時、カツンカツンと足音が聞こえた。



「無駄ですよ、そんなことをしても」

「ひなたくん……!」



レイピアを片手に、ひなたくんが僕たちの前に現れた。



「ひなたくん、一体どうしちゃったんだよ!?」

「……」



ひなたくんは無言で僕を見たあと、フッと笑いを漏らした。



「何も…ないですよ? ただこの館での生き方が自分に合ってると感じたから、ここに住むことにしたんです」

「えっ……奴隷になることが?」

「はい」

「マジで? 奴隷だよ? こきつかわれるんだよ?」

「うん」

「てか、みんなはどうすんの? つくし先生、やんすさん、ゆりちゃん……そうだ、レインさん!」

「……」

「みんな心配してるよ、きっと」

「……」



そこまで言うと、ひなたくんの表情が少し歪んできた。



「……仕方ないだろ、もうオレは……」

「え?」



ボソッと呟いたひなたくんの言葉が聞き取れず、僕は鉄格子に顔を近づけた。


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