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ドラクエらんど

第19章 ビッツの館 (後編)



「……はっ……そん、な……バカな……」



月影の掠れた声が聞こえた。
僕は少し目を開けて眩しくないのを確認すると、恐る恐る周りを見渡した。



「!!」



なんと、月影が目の前でぶっ倒れていた。



何が起きたのか全くわからない。
さっきのあの眩しい光はなんだったのか…。



月影の体からは焦げくさい臭いがした。
激しい雨がその体を強く打ち付け、白い煙が立ち上っている。



「まさか……」

「……死にましたか?」

「えっ…」



背後から聞こえたYUIさんの言葉にドキッとする。
僕は慌てて跪き、うつぶせになっている月影の背中に触れてみた。



「……月影……?」



僅かに呼吸があった。
僕はホッとして、月影の体に両手をかざそうとした。



「駄目です…」

「…えっ?」



うつぶせになっている月影からはっきりと声が聞こえてきて、僕は回復するのをとどまった。
月影は首だけを動かし、ゆっくりと僕の方に振り向く。



「回復しては……駄目です……また奴が……」



月影の瞳は澄んでいた。
あの恐ろしい悪魔ではなく、僕の知っている月影に戻っていた。


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