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ドラクエらんど

第19章 ビッツの館 (後編)

「やめろ、YUIっ…!!」



突如隠し持っていた小型ナイフで月影に切りつけようとしたYUIさんを、ひなたくんは背後から羽交い締めにした。
僕も必死にYUIさんの足にしがみつく。



「どうしてあなたまで止めるんです…?」

「わかんねぇのかよ! アキラさんにとってこの悪魔は…月影さんは、大事な人なんだよっ! でなきゃ普段から逃げ腰なアキラさんが、ここまでしてこの人を守るはずがないだろ!」

「ひなたくん…」



僕のことよくわかってるじゃん…



「たとえそうでも、私はここを守らなければいけないのです。私を救ってくれたビッツ様を、館を、マルクスを………あなたを」

「…っ…」



その時、月影の体が小刻みに揺れた。
かと思うと、ゆらりと起き上がった。



「!!」



月影の瞳は赤く光っている。



「月影……?」



僕たちは息を飲みながら、少しずつ後退りした。



「クックック、全く愚かな人間どもよ…。
貴様らの友情劇にはいい加減ヘドが出る」



悪魔はニヤリと笑った。
だけど大きく深呼吸を繰り返していて苦しそうだ。



「つ、月影を……返せっ……!」

「言われなくても返してやる」

「へ!?」



アッサリとした答えに、僕は目を丸くした。



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