20年 あなたと歩いた時間
第8章 24歳
「のぞみちゃん、大卒だもんね。日勤だけでもやっていけるでしょ?」
「楽はできないけどね…子どもと一緒にいたいし」
「だよねー」
はあ、と奈緒美ちゃんはため息をついた。
「養育費がね、払えないんだって」
「え?あ、元ご主人?」
「そう。ひどいよね。再婚するから払えないって。もう話し合うのもいやだし、諦めようかなー」
奈緒美ちゃんは、よく元のご主人との
揉め事を話してくれる。
私は自分がシングルマザーである理由を、
ごまかして『相手に家庭があったから』と
話していた。そう言えば、同情されたり
深く突っ込まれたりしないのだ。
「のぞみちゃんは結婚してなくて正解だよ。離婚ってほんっと面倒だもん」
「大変だね…」
「絶対再婚はしたくない。一生ゆいと二人でいいや。…のぞみちゃんは?結婚しないの?若いのに」
職場でもよく言われる。
若いのに、結婚したら?と。
でも、そんなことを考えたこともなければ
したいとも思わないのだ。
「私も一生広輝と二人でいいよ」
「だね」
奈緒美ちゃんは、そろそろお弁当にする?
と言い、立ち上がってお尻をぱんぱんと
はたいた。
広輝とゆいちゃんはお山作りに夢中で、
呼んでもなかなか戻って来ない。
「…楽しいんだねー…」
しみじみとつぶやくと、奈緒美ちゃんは
最近買ったというデジタルカメラを
二人の方に向けた。
「ゆいには、こんな結婚してほしくないな。幸せになって欲しい」
「そうだね…私も広輝には、」
死なないで欲しい、と言いかけてやめた。
ただの友達に話すには重すぎる。
「あっ!ゆいっ!」
ゆいちゃんが広輝のおもちゃを取り上げた。
広輝はきょとんとして砂のお山の前に
座っている。
「あ、大丈夫大丈夫。広輝、気づいてないから」
「もう、ほんと自己中なんだから。ゆい!お弁当食べよう!広輝くんも、おいでー」
その時、広輝がゆいちゃんの手を取って
立ち上がった。
スカートの砂を払ってあげて、行こう、と
声をかけた。
「わ、広輝くん優しいー!」
「初めて見た、あんな広輝」
この子がずっと元気で、いつか愛する人と
幸せな未来を築いてくれたら、
それだけでいい。
その人のそばに、ずっといてあげられるなら。
「楽はできないけどね…子どもと一緒にいたいし」
「だよねー」
はあ、と奈緒美ちゃんはため息をついた。
「養育費がね、払えないんだって」
「え?あ、元ご主人?」
「そう。ひどいよね。再婚するから払えないって。もう話し合うのもいやだし、諦めようかなー」
奈緒美ちゃんは、よく元のご主人との
揉め事を話してくれる。
私は自分がシングルマザーである理由を、
ごまかして『相手に家庭があったから』と
話していた。そう言えば、同情されたり
深く突っ込まれたりしないのだ。
「のぞみちゃんは結婚してなくて正解だよ。離婚ってほんっと面倒だもん」
「大変だね…」
「絶対再婚はしたくない。一生ゆいと二人でいいや。…のぞみちゃんは?結婚しないの?若いのに」
職場でもよく言われる。
若いのに、結婚したら?と。
でも、そんなことを考えたこともなければ
したいとも思わないのだ。
「私も一生広輝と二人でいいよ」
「だね」
奈緒美ちゃんは、そろそろお弁当にする?
と言い、立ち上がってお尻をぱんぱんと
はたいた。
広輝とゆいちゃんはお山作りに夢中で、
呼んでもなかなか戻って来ない。
「…楽しいんだねー…」
しみじみとつぶやくと、奈緒美ちゃんは
最近買ったというデジタルカメラを
二人の方に向けた。
「ゆいには、こんな結婚してほしくないな。幸せになって欲しい」
「そうだね…私も広輝には、」
死なないで欲しい、と言いかけてやめた。
ただの友達に話すには重すぎる。
「あっ!ゆいっ!」
ゆいちゃんが広輝のおもちゃを取り上げた。
広輝はきょとんとして砂のお山の前に
座っている。
「あ、大丈夫大丈夫。広輝、気づいてないから」
「もう、ほんと自己中なんだから。ゆい!お弁当食べよう!広輝くんも、おいでー」
その時、広輝がゆいちゃんの手を取って
立ち上がった。
スカートの砂を払ってあげて、行こう、と
声をかけた。
「わ、広輝くん優しいー!」
「初めて見た、あんな広輝」
この子がずっと元気で、いつか愛する人と
幸せな未来を築いてくれたら、
それだけでいい。
その人のそばに、ずっといてあげられるなら。