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20年 あなたと歩いた時間

第8章 24歳

「かなめーっ!」

よく晴れた五月の平日。
真緒の誕生日を祝うために、広輝と二人で
帰省した。
駅に着くと、要が
車で迎えに来てくれていた。
シルバーのワンボックスは、
大した特徴もないのに広輝はすぐに
見つけて走り出そうとする。
その手をぎゅっと繋いで広輝に
注意をする。

「ママ、いつも何て言ってる?車がたくさん通る道では、」
「お手てを離さない…?」
「そう。広輝が車にはねられたら、ママ悲しい」
「…ごめんなさい」
「ん。行こ。要が待ってる」

広輝は要が大好きだ。
幼稚園では今年から担任を持っている
だけあって、子どもが喜ぶツボを
心得ているのだ。
でもそれだけではない。要は昔から、
誰にでも好かれる質なのだ。

「ごめんね、迎えに来てもらっちゃって」
「大丈夫だって。それより広輝ー!おまえ、またデカくなった?まだ四歳になってないだろ?」
「まだ三歳だよ」

すました顔で広輝が答えた。
保育園でも、広輝は同じ年齢の子供達よりも
背が高く、言葉もしっかりしている。
要の車に乗り、シートベルトを締めて
広輝を座らせるとやっと落ち着くことが
できた。電車に乗ると、
いつ広輝がぐずりだすか気が気で
なかったのだ。
幸い今日は、絵本やおもちゃで
おとなしくしていてくれた。

「このまま直行していい?」
「もちろん。私も早く真緒に会いたいし」
「了解!」

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