秘密の兄妹
第1章 冷たいお兄ちゃん
学校に行く道を歩いていると、通り道にある公園の桜の花が私の目に写った。
小さい頃、あの桜の木の下でお兄ちゃんとよく一緒に遊んだっけ…
楽しかった思い出は、今はすべて悲しい思い出に変わってしまっている。
涙が溢れ出て止まらない。
「……紫織ちゃん?」
私に声をかけてきた人を見ると、見覚えのある顔だった。
……あっ、お兄ちゃんの中学からの友達の…武部さんだっけ?生徒会長とかやってたから何となく覚えてる……
私は急いで涙を拭いて挨拶をした。
「おはようございます。」
「…うん、おはよう。悠人は?」
「まだ家です。」
「……そう。じゃあ紫織ちゃん、一緒に学校行こう。校舎隣だし。」
「…私なんかと登校するの嫌じゃないですか?」
「なんで?紫織ちゃん可愛いから俺は嬉しいよ。みんなに自慢できる。」
武部さんは優しく笑って、私の頭をぽんと叩く。
武部さんて昔のお兄ちゃんみたい……。
武部さんの優しさが嬉しくて、思わず笑みがこぼれる。
「…………。」
武部さんは突然黙ると私の顔をじっと見つめる。
「…あの、私の顔に何かついてますか?」
「…ううん、行こう…。」
「はい。」