秘密の兄妹
第1章 冷たいお兄ちゃん
はあ、眠い……。
俺はいつものように遅刻ギリギリで学校に登校する。
「悠人、おはよう。」
「なんだよ、春樹。朝からその爽やかな顔見んのむかつくんだけど。」
「…今日、俺、紫織ちゃんと一緒に登校してきた。」
春樹のその発言で俺の眠気が一気に吹っ飛んだ。
「紫織ちゃん、すごく可愛くなったな。長くて綺麗な黒髪に…犬みたいな潤んだ瞳、その上、透き通るような白い肌……。久しぶりに見て驚いたよ。他の奴らが騒ぐ理由がよく分かった。」
「あっそう……。」
平静を装って窓際の後ろにある自分の席に座る。
春樹は俺についてきて、俺の前の席の椅子に腰掛けた。
「紫織ちゃん泣いてたけど、悠人、紫織ちゃんに何か泣かすようなこと言った?」
「……別に…。朝からうざかったから【うざい】って言っただけ。何か問題ある?」
「…ない。」
春樹はニコニコ笑いながら楽しそうに答える。
「は?なんだよそれ…」
「紫織ちゃんのこといくらでも泣かせていいよ。俺がその度、紫織ちゃんのこと慰めるから。」
「…………。」
「何か問題ある?」
春樹はお気に入りのオモチャを見つけたみたいに嬉しそうにしている。
「……勝手にすれば…」
「…ああ、勝手にする。なあ、紫織ちゃんてまだ処女だよな?」
春樹の言葉一つ一つが俺を無性に苛つかせる。
「……知らねえよ。」
「俺が奪ってもいいよな?紫織ちゃんの処女。知らない奴に奪われるより、知っている奴に奪われた方がお前も安心だろ?俺、自分の彼女は大事にするタイプだし。」
「…紫織がお前のこと好きになるとは限らないだろ……。」
「好きにならないとも限らない。」
春樹はふっと笑うと自分の席に戻っていった。
「…………。」
…腹立つ!!!紫織に近づくな!!!
……【奪う】とか簡単に言うなよ……
…兄妹じゃないから簡単に言えるのか……
俺は窓に目を向け、校庭に咲いている桜の花を見た。