秘密の兄妹
第1章 冷たいお兄ちゃん
体育のバスケの授業が終わり、自販機でジュースを買っていると、隣のクラスの奴に声をかけられる。
「高瀬!」
「何?」
「これ、妹の紫織ちゃんに渡してほしいんだけど…。」
……またか…これで何人目だ……?
「分かった…。」
俺は差し出された手紙を受け取り、その場を去った。
非常階段の踊り場で手紙の中身を読む。
「……一目惚れ?ふうん……」
ご丁寧に携帯のアドレスまで書いてある。
俺が紫織に渡すわけねえだろ……馬鹿な奴…。
俺は手紙をくしゃくしゃに丸めて、廊下の端にあるごみ箱に捨てた。
――――――
――――
――
下校の時刻になり、いつもつるんでいる数人の仲間と校門の前を歩いていると、中等部の校門の前で春樹の姿を見つけた。
あいつ…何してんだ?
「なあ悠人、今日はどこで時間潰す?」
悪友の風磨が俺の肩を組んで話しかけてくるけど、俺は春樹が気になって風磨の声なんてほとんど聞こえてなかった。
春樹は目を見開くと、誰かに手を振る。
何か嫌な予感がする。
「紫織ちゃん!」
春樹が紫織の名を呼ぶと、紫織が息を切らせて春樹の側に駆け寄ってきた。
「武部さん、もしかして待たせちゃいましたか?」
「ううん、全然。」
紫織は嬉しそうに春樹に笑いかける。
「…悠人、あれ…春樹といるの紫織ちゃんじゃん……。」
「……ああ…。」
「こう見ると、あの2人、けっこうお似合いだよな…。どっちも優等生って感じだし。」
「…………。」
紫織、何ヘラヘラ笑ってんだよ……。優等生ぶってる春樹の下心なにも知らないで…。
男なんてみんな考えてること一緒なんだよ!!
2人は携帯を取り出すと、お互いの連絡先を交換し始めた。
さすがに、黙って見ていられなかった。