秘密の兄妹
第1章 冷たいお兄ちゃん
紫織が俺の後ろについて歩いているのが分かる。
2人で歩くなんていつぶりだろう。
……春樹の奴、次に紫織をどこに誘うつもりなんだ…?
まさかいきなりヤったりとかしないよな……。
「お兄ちゃん…」
…紫織、危機感なさすぎ!
「ねえ、お兄ちゃん…」
「うるさい、何だよ!」
俺の心配を何も知らないで能天気でいる紫織が腹立たしくて仕方がない。
「スーパー寄っていい?夕飯の食材買いたい。いつも学校の帰りに寄ってるの……駄目?」
……俺が友達と遊んでる時に、紫織は毎日スーパーで食材の買い出しをして、一人で晩御飯作ってたんだ……。
「早く済ませろよ。」
「うん!」
紫織は幸せそうに笑う。
…まずい……可愛い…
買い物かごを持つ紫織の様子を横から見る。
「今日の夕飯は何作んの?」
「うんとね、とうふのハンバーグと豚肉入りの野菜炒め…あとタコときゅうりの酢の物。」
……あいかわらず、バランスの良さそうな食事。
母さんですらそんなもの作らないのに、
本当に馬鹿な妹…。
「お兄ちゃんとうふのハンバーグ好きでしょ?」
…好きだよ、紫織が好きな食べ物だからな……。
そんなこと知らずに俺の好物だと思って作ってる紫織は本当に馬鹿。
俺が和食を好きなふりをしてるのも、紫織にバランスのいいご飯を食べさせたいからなのに全く気づいていない……
どうしようもないくらい馬鹿で可愛い俺の妹……。