
ベース
第1章 窓の向こう
カキーン
「よっしゃ!走れ走れ」
放課後のグラウンド
鳴り響くバットの金属音と歓声
オレンジ色の大きな夕日を背景にして
青い少年達が声をはってる
「ねぇ、そこの箱取ってくれない?」
横目でちらりと見ると、白衣を綺麗に着こなした美人がパソコンに向かって文字を打っている
お団子頭で妖艶な首
長いまつ毛 整った眉
つやつやな唇 高い鼻
とても独身とは思えない
私の通う保健室の先生 天野翔子
あくまで私の想像だけど多分30代前半
「ちょっと聞いてる?」
「今いいとこなんだよね」
窓に肘を掛け、グラウンドだけ見つめながら私は応えた
