
白衣と天使
第1章 one
真っ白な部屋で、ただ小さく歌を口づさんでいたお前を、
俺は、天使やと思ったんや。
雛「ヤス〜、入るで?」
安「はぁ〜い。」
重たく感じる扉を開けると、
そこにいつでもお前がいる。
ここは、この街では大きな総合病院。
様々な症状を抱えて、様々な人が行き交っている。
俺は、ここに6年勤めている医者。
患者にもそれなりに信頼されていて、
同僚からの人望も熱い。
今、俺の目の前にいる安田章大は、
原因不明の難病に犯されている。
俺がこの病院へやって来た時、
彼はもう、この部屋にいた。
俺がヤスの担当医になった初めの日。
挨拶をしようと、扉を開けた。
見慣れた真っ白で無機質な部屋に
ポツンと見える小さな背中。
小さな歌声。
あれ?男ちゃうかったっけ…?と、
カルテを見直したくなるほど澄み切った少女のような歌声に、
俺は、いつの間にか心掴まれていて。
産まれて初めて、『恋の鐘』の音を聞いた。
仕事にあまり私情を挟むのは良くないと思うが、
俺は、看護師にさせてもいいような仕事をヤスだけは、俺がすると頻繁にこの病室へ足を運んでいる。
立場なんて、どうせなら利用してまえ。
安「あれ?信ちゃん、まだお仕事なん?寝てないんちゃう?しんどないん?先生は大変やなぁ〜…」
雛「信ちゃんちゃうやろ、村上先生や。患者に心配されたら、俺もお終いやな。命かかっとる仕事や。自分の体は、いつでも万全にしとるわ。ほら、血圧測るから。」
安「信ちゃんでもええっていうたん、誰よ。今更やろ?…信ちゃん、無理せんときな?…右腕でええ?」
癒される笑顔。
心地よい声。
俺は、お前のそばにおれば、
いつでも元気になれんねん。
自分の方がしんどいくせに、
人に優しくできるヤスは、すごいと思う。
俺は……絶対コイツを助けたい。
ヤスを、…章大のことは、俺が絶対に守ったる。
