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幕末乱舞

第1章 序

 高台にある公園の滑り台の上に座って、梶原せとは眼下に広がる街を見下ろしていた。
 ごちゃついた街は刺激に溢れ、手を伸ばせば何でも手に入る世の中。
 高望みしなければ普通に幸せに生きていける。
 普通に就職して普通に恋して普通に結婚して、子供を普通からはみ出さないように必死に育てる。
 そうやって育った子供たちは温室の中でしか生きられず、個性がどうのと言うメディアとは裏腹に、就職活動は黒のリクルートスーツ一色。
 何かあるとすぐキャパオーバー。
 そんな未来を考えると、ふと目眩を覚えてしまう。
 ・・・吐き気がする。
 何が一番吐き気がするかというと、それは自分自身だから。
 同じ。
 何もかも同じ色に塗られた群衆の中のひとつ。
 いなくなっても大した問題にはならない。
 せいぜい両親が悲しむだけ。

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