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幕末乱舞

第2章 出逢い

「吉栄でも糸里でもないな」
 男はせとの顔をまじまじと見ながら呟く。
「撤収だ」
 別の男の声がした。
「・・・・ちっ」
 男は小さく舌打ちすると、せとの顎を離し、今度は腕をぐいっと引っ張りあげる。
 しかしせとは腰が抜けてしまったのかうまく立てない。
 ずるずると引きずられへなへなとその場にへたり込んでしまうせとを見かねた男は、せとの腰を抱くと軽々とせとを肩に担いだ。

 や・・・・

 捲れるスカートを懸命に直すがずぶ濡れでうまくいかない。
 しかし捲れたブレーザーとシャツの中に男の手が入ってしまっていて、それはどんなに直そうとしても動かない。
 歩く度に横腹に擦れる手がくすぐったい。

 やだ・・・・

 暗闇だからまだいいけど、昼間なら恥ずかしくて死んじゃう。
 ゆらゆらと逆さまに揺れながら、せとは不安と恐怖と女子高生らしい恥じらいに揺れていた。
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