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幕末乱舞

第2章 出逢い

 血!?

 せとは上半身だけ起こして呆然とそれを見た。
 雨音に混じって、ドタバタという音と悲鳴が微かに聞える。
 何が起こったんだろう。
 怪我はしなかったようだが、きっと今それ以上に大変なことが起こっている。
 と、その時。
「お前、誰だ」
 低い声が響き、せとの肩がびくっと跳ね上がる。
 そっと前方を見上げると、ひとりの人物がせとの目の前に立っていた。
 ぼんやりとしか見えないせとの目とは違い、その人物の目にはせとがちゃんと見えているようで、視線がせとの頭から足の先まで這うように舐めまわす。
 ぞくりと悪寒が走る。

 逃げなきゃ・・・・

 しかし身体が動かない。
 その人物は屈み込むと、せとの顎を掴みぐいっと持ち上げた。
 若い男のようで、ずぶ濡れになった雫が彼の頬を伝いせとの顔に落ちる。

 嫌・・・・・・

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