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同窓生

第14章 ライバルの出方

夏海のことは、みんなが心配していた。

みんな、夏海が誰かに頼ることを待っていた。

それでも夏海は、ただただ一人でいた。

夏海の練習量は変わらなかった。

運動会まであと一週間という時……。

夏海が一人で帰るところを美桜と敦は待ち伏せした。

『夏海ちゃん。』

「美桜ちゃん……。」

二人の姿を見てすぐに露骨に嫌な顔をした、夏海。

『ごめんね。どうすれば良いか分からないんだけど、放っておけないの。』

「俺も。佐伯見てると心配だよ。」

二人の優しさが嬉しかった。

と、同時に切なくなった。

「いいの。放っておいて。」

それしか言えなかった。

『放っておけないよ。友達だもん。』

「佐伯……。あんまり頑張りすぎんなよ。」

夏海の涙腺は爆発寸前……

気がつくとポロポロと涙を流していた。

『夏海ちゃん……。』

「ごめん。ごめん。美桜ちゃん。キツイこと言ったり、嫌な態度とったり……。敦くんも、ごめん。」

『いいよ。』

「きにするなよ。」

「あたし、……敦くんのことが好きだったの。でも、二人、付き合ってるみたいだから、美桜ちゃんに嫉妬してたの。ずっと……。ごめんね。自分の嫌な部分をさらけ出してみて、そういう自分はやっぱ嫌いって思い知ったよ。気にしてくれてありがとう。」

夏海はこの数日でいろいろ考えていた。

だから一人でいたのだ。

しかし、周りとの時間を持たなくなるほど、孤立していく自分と向き合わざるを得ない状況に、混乱していた。

本当は一人でいたくなかったのだ。

だから二人が話しかけてくれて、夏海は嬉しかったのだ。

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