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同窓生

第21章 悩み事

『お待たせ、敦くん。』

「……行こう。」

『……』

可愛いって言ってほしかった美桜だったが、言ってもらえなかったことに少しがっかりしていた。

手を繋いで歩きたい……

しかし、電車の中で手を繋ぐのもおかしいので、二駅先の目的地に着いてから!と、思っていた。

それでも敦は腕を組んだり、ポケットに手を入れたりしていて、手を繋ぐのは難しかった。

映画からランチまで、敦は聞かれたことにしか答えてない。

会話もいつもより少なすぎる。

美桜は、きっと自分が何かをしてしまい、それを直してほしいと言えずに困っているのだろうと思っていた。

そして、敦の雰囲気は、美桜のことをとても緊張させるものであった。

ウィンドウショッピングの時間……

敦が足を止めた。

『敦くん?』

向かい側から、奈瑞菜が友達と歩いてきた。

敦にとって、今一番会いたくない相手だ。

「敦!」

奈瑞菜が上機嫌で声をかける。

誰かも分からないが、美桜はペコッと頭を下げて挨拶をした。

『こんにちは。』

「こんにちは。敦の彼女さん?」

奈瑞菜は敦の不機嫌さなんて興味すらもたず、美桜に馴れ馴れしく話しかける。

『は、はい。』

「可愛いね!」

『あ、えと……ありがとうございます。』

「私、奈瑞菜。敦の家の隣に住んでるんだけど、今は高校の寮にいるの。」

勝手に自己紹介まで始まり、敦のイライラは頂点に達そうとしていた。

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