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同窓生

第10章 複雑な想い

子どもたち用に作られた、離れ。

ここでもっと小さい時、子どもたちだけでかくれんぼしたり、おままごとしたり、ゲームしたり。

ここに大人は来ない。

「美桜は、俺の気持ちなんて知らないだろ?」

克也が口を開いた。

『知らないよ。』

「俺はお前に失恋したんだからな。」

『え?』

話の流れがいまいち理解できない美桜は、首をかしげていた。

「美桜?意味分かってねーな。克也もっと分かりやすく言えよ。」

弥彦が間に入る。

「バカ。これ以上言えるかよ。」

「じゃぁ、俺が言ってやるよ。」

「やめろ。」

「美桜!」

『ん?』

弥彦が見つめる。

凛々しい瞳で。

「俺たちは、ずっとお前のことが好きだったんだよ。」

『え?』

「従妹だから、どうにもならないけど、俺たち、真剣に他の誰かをって考えて目を向けてみた。けど、やっぱり美桜が好きなんだよ。」

真剣な瞳が突き刺さる。

そっと

頭を撫でられた。

「この気持ちに答えてほしいなんてことは言わない。」

「一度だけで良いから……」

『ん?』

「抱き締めさせて?」

『えっ?……抱き締めるだけだよ?』

「うん。」

「もちろん。」

先に弥彦。

ふわっと包み込むような……

優しさに抱き締められた。

グシグシ

頭を撫で、

「ありがとう」

そう言った。

次に克也。

キュッとしっかり抱き締めた。

意外と分厚い胸板に、一瞬、ドキドキする。

頭を撫で、耳元で

「美桜……ずっと…………」

耳が弱い美桜。

変な声が出ないように耐える。

胸のドキドキも絶え間なく続く。

「好き…だ。」

『かっちゃん……』

克也の鼓動が克也の言葉に重みを持たせる。

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