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言葉で聞かせて

第8章 猫に恋敵

「なんだ?」
「今のって仕事に関係するお話ですか?」
「いや、ちげぇよ?」


何を勘違いしたのか流は律儀にも尋ねてきた

その真剣な顔立ちが妙に面白くて俺はつい笑ってしまう


「お前真面目すぎだろ」
「そうだぞ森くん。こいつらの会話を理解するなんて俺たちには到底出来ないよ」
「斎藤さん今日絡みうぜぇっすね」


「だって新人さんと仲良くなりたいんだもん」と拗ねるおっさんを膝で蹴る


「基本俺たちの会話はプライベートなことだと思ってくれて構わないから」
「僕達は一緒に住んでいるので色々あるんです」


流にまで営業スマイルで話しかけた悠史は「紛らわしくて申し訳ありません」と謝った


「そう、なんですか……一緒に……」


流が反芻していると店長がフロアに入ってきた


「開店するぞ。今日も頑張れよ」
「「はい」」


三崎さんの合図で内藤と中野が重厚感のある扉を両開きに開く


「「「ようこそ、『ange』へ」」」


着飾った女が大勢フロアに入ってくる
そのうち二人が俺たちに近づく


「流星、聖夜。来たわよ」
「久しぶり」
「ようこそ」
「久しぶりだな」


俺たちの腕に吸い付くように絡んだ女の腕を軽く引いてエスコートしながら席に向かう


「流、来い」

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