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言葉で聞かせて

第8章 猫に恋敵

俺たちが談笑している間、流は黙っているだけで何も話さなかった

結局流の声を聞く機会はないまま次の指名が入り、俺たちは「ご馳走様」と席を立った

そして次の席に移動する時俺は流に小声で告げた


「流、お前は裏で休憩だ」
「えっ……まだ大丈夫ですっ」
「お前はそのシケた面客に見せんのか?客商売舐めんな。行け」


俺の辛辣な言葉に流は僅かに目を潤ませて小さく返事をした

流がいなくなると「言い過ぎだよ」と悠史に背中を軽く叩かれた


「いいんだよ。新人なんてあんなもんだろ」
「……ちゃんと後でフォローしなよ」


俺は小さく舌打ちする


わかってるっつの



そして営業後俺は悠史の忠告通りに流の元に行った


「ぁ……お疲れ様です」


目、赤い
いちいち小せえことで泣く奴は嫌いだ


なんてまた酷い事言いそうになり必死で堪える


人泣かせといてそりゃねぇな


そこで頭に浮かんだのは何故か千秋で
想像の中で泣いている千秋の姿に心が痛んだ


千秋が誰かに泣かされたりなんかしたら
相手ぶん殴るなんてもんじゃすまさねぇ


「悪かったな。言い方がきつかった」


俺の謝罪に驚いた風な流は嬉しそうに微笑んだ


「いえ。アドバイスありがとうございました。明日からまた頑張ります」
「……お疲れ」
「お疲れ様です!」

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