言葉で聞かせて
第8章 猫に恋敵
「ーーそいつ俺を追ってホストになったって言ってた奴なんだけど、俺に憧れたんならうじうじ泣くなっつうの」
今日アフターに出掛けた悠史と逆に俺は家で千秋の作った飯を食っていた
今日の仕事の愚痴を吐きつつ飯をかっ込んでいる俺に千秋はお茶を注いでいる
「……でもまぁ、見た目以上に根性がありそうなやつで良かったよ」
すると俺の食べ終わったものを片付けていた千秋がキッチンでカチャン、と少し大きな音を立てた
普通なら気にしないような音だろうが、千秋は基本物の扱いが丁寧でそんなことしない
「大丈夫か?何か落とした?」
俺が対面式キッチンの向こう側にいる千秋の方に向き直ると、千秋は焦ったように首を横に振っていた
手が滑っただけか?
「ふぁ……ぁ……」
酒も入ってて、飯も食って
眠くなってきたな
大きな欠伸をしていると俺の横に座った千秋が紙を差し出す
『眠いんですか?』
「あぁ、まぁな……こんな時間か。そろそろ寝るか」
俺の言葉を合図に千秋は枕を部屋に取りに行った
一緒に寝るってのはまだ続行中だ
今日は俺の番
だから悠史はアフターに行って俺は行かなかったってわけ