
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
「良かった…………」
声、出てる
「?」
きょとん、と惚けた顔をしている千秋を、俺はとりあえず抱きしめた
「わっ」
極度のストレスを感じて過去二度も失声症になった経験のある千秋が、大事な悠史をなくしてもしかしたら、と思っていた
「ごめんな……千秋」
俺が悠史と変われれば良かったのに
ちゃんとあいつ取り返すから
「敦史さん?」
「なに?」
「ごめん、て何の謝罪ですか?」
俺の腕の中で顔を上げた千秋の前髪を搔き上げて、キスを落とす
そして顔を見られないようにもう一度抱き締め、嘘をついた
「今朝、起きるまで一緒にいられなくて……悪かった」
俺がそう告げると、千秋がびくっと身体を揺らした
「そうでしたっ。謝るのは僕の方です……ごめんなさい……あんなに取り乱してしまって……最後には気絶なんてしてしまって……」
申し訳なさそうに眉を下げる千秋を安心させるように微笑む
お前は悪くない
悠史のこと大事だったんだろ
だから、それだけショックだったんだろ
なら、いいよ
俺が頑張ればいいだけだ
「いや…………体調悪かったのに、飯作ってくれてありがとな」
