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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


何度見てもこれは

ウチと同じマンションだ


「…………」


どういうことだ?
灯台下暗しを狙ったってことか?

いや、それにしても近いとかの問題じゃねぇだろ


頭の中で考えを巡らせていると、今日来店した時のエリカの余裕さが頭に浮かぶ


こんなに近くにいても、俺には悠史を取り返せねぇって……ことか?


「っ」


俺は力一杯目の前のテーブルを叩いた
バァンッ、とやたらデカい音が鳴り、その際倒れたマグカップからさっきまで少しずつ口をつけていたコーヒーが机に溢れる


くそ
くそ
くそ

ふざけんなよ


俺が拳を握りしめていると


「敦史さん!?」


千秋が洗面所から走り出てきた


「どうしたんですか!?お怪我は?」


コーヒーで濡れていた手を千秋が心配そうに見る
風呂上がりの自分が汚れるのも構わずに


「……いや、悪い…………手が滑って……」
「そうですか。どこか痛いところは?」
「大丈夫だ」


「良かった」と心底安心した表情を浮かべる

その表情に俺は言葉にし難い、なんつーか
罪悪感のようなものを抱いていた


なんだ?これ
千秋に対して秘密にしていることが多いから?

いや、違うな
なんだこれ、まじで

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