
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
微かに聞こえた声に、布団を少し捲ってみると
「!」
「……ふ、……っ、く……ぅ」
千秋が、寝ながら泣いていた
それを見た途端思わず声が出そうになる程胸が痛む
くそ
「千秋、千秋」
「ぅ……ん……」
「起きろ。大丈夫か?」
「あつ、し……さん?」
ゆっくりと目を開けた千秋は俺を見てから自分の状況を確認して、驚いた顔をした
「あ……なんで僕、泣いてるんだろう……」
「……」
千秋にも原因はわかっているはずなのに、惚ける千秋は気まずそうに涙を拭う
「……っ」
「え……わ!?」
俺は思わず千秋を抱きしめた
大丈夫だ
大丈夫
「ふ……っぇえ……」
暫くすると、千秋は再び泣き出した
朝泣いてた時より、静かに
1日かけて現実を飲み込んだ苦しさを、ゆっくりと吐き出す
俺は優しく背中をさすって千秋が落ち着くのを待つ
別に1日ぐらい眠れなくても構わない
だからせめて、千秋が泣いた分だけでも千秋の心が軽くなって欲しいと祈る
同じマンションにいる悠史は今、何を考えているだろう
俺や千秋と同様に多少は苦しんでいるだろうか
わかんねぇ
同じ腹から生まれてきたくせに
今までずっと一緒だったのに
少しもわかんねぇ
