
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
エレベーターでエントランスの階まで降りると
「!」
入り口の壁にエリカさんが寄りかかっていた
エリカさんは僕を見て微笑む
「悠史!やっと降りてきた。ずっと待ってたのよ?」
「……すみません。お待たせしてしまって」
「うん。でもいいの」
ご機嫌なエリカさんは僕の腕に自分の腕を絡ませて笑う
「ふふふっ……」
「?」
「これで、悠史は私のものなのね」
違う
僕は
「……そうですね」
僕の答えに満足そうに笑ったエリカさんは「それじゃ、行きましょうか」と言った
「どちらに行かれるんですか?」
「もちろん、私達の新居よ。パパが用意してくれたのよ?」
「そうなんですか」
エリカさんが僕の荷物は全部そこに運んであると言いながら組んでいた腕を引く
けど
「?ちょっと待ってください」
「なぁに?」
向かおうとしているのは今使ったばかりのエレベーター
「そっちは、僕がいた家ですよ?」
まさか挨拶するなんて言わないよね?
エリカさんは僕の言葉に心底楽しそうに笑った
「嫌だ、悠史ったら。マンション全部が悠史の家だったわけじゃないでしょう?マンションなんだから色んな人が住んでるのよ?」
「いえ、そうではなくて……」
何を言ってるんだろう?
エリカさんの意図がわからない
