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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


エリカさんは立ち止まってしまった僕の腕を引いて再び歩かせると、エレベーターの呼び出しボタンを押した


「だからぁ、今日から私達がこのマンションの色んな人の中に入るのよ?」
「えっ」
「ふふふ……わかった?私達の新居、ここのマンションの一室なの。偶然ね?」
「……」


到着したエレベーターに乗り込んで、階数ボタンを押したエリカさんは朗らかに笑っているが僕は動揺を隠せない


偶然なわけない……!!
絶対、わざとだ

だってこの前マンションの下まで来てたじゃないか

どうして


少しだけ薄れていた心の痛みが戻ってきた

うちがある階よりずっと下の、降りたことのない階でエレベーターが止まる

迷いなく歩くエリカさんについて歩いて、立ち止まったところで一緒に立ち止まる


「ここよ?ちょっと狭いけどね?」


照れくさそうに鍵を取り出して扉を開いたエリカさんは、その鍵を僕から隠すようにカバンの中にしまう


「?」
「だめよ。ここの鍵は渡さないの」
「……そう、ですか……?」


なんでだろう


「さ、入って。今日からここが私達のおうちよ」


背中をとん、と押され中に入る

見てみればほぼ最上階で特別なつくりをしていた僕が住んでいた部屋より随分小さい

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