
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
静かに入ってきて、椅子に座ることもなく立ち尽くしているエリカさんに僕から声をかける
「どうかされたんですか?」
「……」
「?」
なんだろう
顔色悪いし、少し震えてる?
風邪かなぁ
暫くエリカさんが話し出すのを待つ間、エリカさんは僕ではなく僕越しのずっと遠くを見ているような目をしていた
そしてようやく動いたと思ったら
「!?」
僕の胸の中に飛び込んできた
思いっきり背中を壁に打ち付けそうになるのを必死で抑える
危ない……
「……」
僕の腕の中でまた黙ってしまったエリカさんの頭をなんとなく撫でる
こうしていると、普通の女性と変わらないな
人を脅したり、嘘をついたりするようには見えないや
「どうしました?」
僕はもう一度エリカさんに問う
すると、震えるエリカさんが漸く言葉を発した
「……いて……」
「はい?」
「抱いて………悠史……」
「え……っ」
抱いて、って
「エリカさん?何かあったんですか?」
僕が聞いてもエリカさんは首を横にプルプルと振るだけ
「いいから、抱いて……?何にも考えられないようにして欲しいの……」
