
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
エリカさんは僕の顔の目の前まで近づいて美しく微笑んだ
「だから……ね?既成事実作らないと……」
既成事実?
妊娠してない?
なんだそれ
じゃあ僕が今まで悩んでた意味ってなんだ
「ふふっ……ほら、見えた。可愛い」
エリカさんは僕の着ていた服を捲って胸を露わにすると、そこに指を這わせる
先端をたまに舐められて濡れたそこを今度は指で摘ままれた
うっとりとした瞳で僕を見つめるエリカさんだけど、僕の心の中には沸々と怒りが湧き上がってきていた
じゃあ、敦史や千秋さんを傷つけたのも
僕の決意も、全部無駄だったってこと?
最悪
「……」
「悠史……悠史……」
僕が黙っていることに、エリカさんは気づいていないんだろうか
女性に積極的にされて、嫌悪感を感じたことなんて今までなかったのに
気持ち悪い
触るな
吐き気がする
「触るな」
僕の口から出たなんて自分でも信じられないほど低い声がエリカさんの動きを止める
「悠史……?」
伺うように僕の顔を覗き込んできたエリカさんの目を睨むように見た
エリカさんがビク、と肩を揺らす
「僕に触るなよ」
「……っ」
