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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


こうなってしまった今ではただの言い訳にしかならないけど
千秋さんとの生活があまりに甘美で、離れたくなかったんだ

おはよう
いってきます、いってらっしゃい
ただいま、おかえり
おやすみ

普段何気なく交わす一言一言が愛しくて


でもちゃんと考えなきゃいけなかったんだ

僕たちより千秋さんの方がずっと立場を失うには危うい場所にいるってこと


『……』


僕が何も言えなくなったのを見て、エリカさんが言う


『大事な大事な千秋と敦史を守りたいでしょう?私は暴力で解決しようとするような、馬鹿な女とは違うわよ?』


暴力で解決しようとする馬鹿な女、っていうのは菜摘のことだろうか


エリカさんがどこまで知っているのかわからない


『私は、欲しい物は絶対に手に入れなきゃ気が済まないの。だから悠史のことも、絶対に手に入れてみせるわ』
『そこに心が伴っていなくても……ですか……』


苦し紛れに僕が睨みながら言うけど、どこ吹く風と言うようにエリカさんは余裕の表情を浮かべている

そして馬鹿にするような笑みを見せた後


『馬鹿ね、悠史。世の中お金があればなんだって買えるの。愛だって、お金で買えるのよ?』

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