
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
本当はそんなわけのわからないことに、納得したくなんかない
でもこの状況じゃ頷くしかできなかった
『……この記事は、消していただけるんですか』
『もちろん。これはまだ未発表のものだから。私の一声で公開することも消すことも出来るわ』
『……』
『……悠史?』
黙った僕に、エリカさんが恥じらうような顔をみせた
『私ね、自分から思いを告げるなんて出来ないわ。男性なら……リードしてくれるでしょう?』
居住まいを正したエリカさんは僕の言葉を待っている
『……』
千秋さん、敦史
ごめん
僕には2人を守るほどの力はないんだ
『エリカさん、貴方を心から愛しています。結婚を前提にお付き合いして頂けませんか?』
エリカさんの、勝ち誇った顔が目につく
内臓全部がせりあがってきて吐きそうだ
『嬉しい。もちろんよ、悠史』
『……』
そう言ったエリカさんは懐から小さな機械を取り出した
……ボイスレコーダー……今の会話はしっかりと録音されてたってことか
もう逃げられないな
深い絶望の海の底に落ちた僕に、エリカさんは追い打ちをかけてくる
『愛する人と交際できるようになったら、悠史はそんな悲しそうな顔をするの?』
『……いえ、そんな……』
